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渡独して2年目辺りから、ワイナリーにも時折足を運ぶようになるなか、ヴュルツブルグのとあるワイナリーで、仕事を体験させてもらう機会に恵まれた。

元々、ヴュルツブルグを選んだ理由は "フランケンワインの集積地" であるため。(渡独の経緯は "いきさつ" 参照)
初年度から色々なフランケンワインを試している中で最も気に入ったワイナリーが、フルーティさを特に前面に押出してくる "Weingut Reiss:ライス醸造所"。ヴュルツブルグ5大ワイナリーの一つに数えらえるワイナリーである。

少しでもワイナリーの仕事を体感したいと思っていた中、こことのつながりで色々な体験をさせてもらえ、ワイン醸造家の一面を感じることが出来た貴重な時間だったので、それについて少し書いてみようと思う。

ちなみに、通常の労働ビザ(働き先が指定されているモノ)ではアルバイトも基本的には禁止なので、あくまで無償での"体験"のみとなる。これは旅行者も同じ。逆に言うと、こういった事に興味のある人は、"体験"であれば出来るということ。ワイナリーでは冬を除いて様々な仕事があり基本的に作業者不足なので、飛び込みで頼めばこういった体験も可能な場合が多いだろう(小さなワイナリー限定の話かもしれないが。)。片言の英語やドイツ語でもなんとかなるので、興味のある方はトライしてみる価値は十分あると思う。


1.Würzburg Weigut Reiss:ワイングート ライス(ライス醸造所) HP
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ヴュルツブルグのメインとなるブドウ畑 "Stein;シュタイン" の裏手 "Unterdürrbacher" に位置する家族経営の小さなワイナリー。ヴュルツブルグ市内のスーパーやワインショップではたまに見かけるが、それ以外の街ではほぼ目にすることが無い。ほとんどが地元で消費される小規模のワイナリーながら、ワインの賞を毎年獲得する名醸造所。

街中のスーパーでここのワインやフェーダーバイザーに出会いその強いフルーティさに惹かれて、何度か散歩がてら直接ワイナリーに買いに行くようになっていたが、あまり詳しい質問などはできずにいた。(ここのフェーダーバイザーについてはこちら"秋の味覚 フェーダーバイザー 2016"も参照)
そんな中、大学進学の入学条件である "Vorpraktikum:事前実習"(大学進学については別途アップ予定) について質問してみたところ、日本へ何度か訪れたことのあるオーナーに気に入ってもらえて、その後、以下の様な体験のお誘いをもらうことになったのである。
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ワインの専門用語など含めて、ドイツ語が不安であってもいざ話してみないと何も進まないのがドイツ生活。わかっちゃいるけど引っ込み思案になってしまうのも事実。いつも一歩進んでみて思うのが自分の学習能力の無さである。。。


2.7月末 Entblättern;葉摘み
ぶどうの実がしっかりとしてくる夏の時期に大切な仕事の一つがこの"葉摘み"。
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"葉摘み"と言うのは、ぶどうの実の周辺にある葉を取り除き、ブドウの実に太陽光と風を当ててあげることで、病原菌から実を守りかつ成長を活性化させてあげるためのもの。葉の量や育ち具合を見ながらスピードも要求される作業である。詳しいことは、2018年夏に詳しく経験してから書くことにしよう。

ここフランケン地方は、川沿いの急斜面にブドウ畑が広がっているので、作業が大変。作業によっては、二人一組となって上からロープで引っ張りながらの作業もあったりする。なぜにこんな急斜面にブドウ畑を作るのか、、なんて思うけど、この斜面こそがキモで、太陽の光が直角に近い角度で当たる上にフランケンの温暖な気候が相まって甘いブドウが出来るわけである。

実はこの時が初めてのブドウ畑でのお仕事体験。この時とにかくこみあげてきたのが、あーようやくここまでたどり着いたなぁ、と言う感慨深い感情。まだまだ"体験"に過ぎないとは言え、とてもとても大きな一日だったことを今でもしっかりと覚えている。

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他にもKeller:ワイン貯蔵庫(セラー)の整理や特別なワインへのエチケット(ラベル)貼り、Schatzkammer(ビンテージ用)ワインの長期保管用荷造りを手伝ったり、、数日間で色々な作業を経験させてもらった。
そして最後にテイスティングのお勉強も。日本語では少し経験はあるけど、、ドイツ語の味の表現がとにかくわからず、、フルーティさや辛さ、酸味くらいしか言えず。1年ほど働いている実習生は生産地方まで書き込んで色々と議論しているのを見て、恥ずかしくなってしまった。。が、まぁ最初はこんなものだろう。相変わらず奥の深い世界である。


3.9月末 Weinlese;ブドウの収穫
このために、醸造家たちは一年かけてブドウの世話をしてきているといっても過言ではない、たのしいたのしい収穫。心なしか、いや明らかにワイナリーの雰囲気も高まっている。
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フランケン地方では、ぶどうの収穫は8月末辺り〜10月中旬辺りまで行わている。各ワイナリーの考え方やブドウの品種、ワインの種類によって時期が前後するわけである。

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全て手摘みで行い、ワイナリーに持ち帰った後、ブドウの粒のみを取り出して絞っていく。最後のグラスは搾りたてのブドウ果汁;Most である。ライス醸造所の特徴は甘みの強さなので、しっかりと熟れたブドウを使用していることもあり、この果汁が驚くほど甘い。現に写真に写っているように蜂が寄ってくるくらい。ちなみにこの時の収穫はフランケン地方の代表品種の一つ、Müller Thurgau;ミュラートゥルガウ。
この後、フィルターに通されてタンクへ入り、発酵工程へ進んでいくことになる。(この辺りの話も2018年秋には書けるだろう。)

作業はとにかく楽しい。収穫を続けるとずっしりと重くなる容器。トラクターの荷台にうず高く積まれたぶどう達。一面に広がるフルーティな香り。まさに "ワイナリーの秋" である。一日中自然の中で作業をしていると、いかに自然に依存して生きているかを実感できるし、それを感じた瞬間の感情はえも言えない。

そして、もう一つ面白い体験が、フェーダーバイザーの瓶詰め。
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フェーダーバイザーはアルコール度5%程度の微発酵ワインでワインの地方でしか飲めない季節モノである。2週間ほど前に収穫して発酵させたフェーダーバイザーを瓶に詰めていくわけだが、少量なのですべて手作業。この年は150本のみ。
ヴュルツブルグの大手であるJuliusspitalやBürgerspitalでもフェーダーバイザーは作られていて、そちらは何度か品種を変えてフェーダーバイザーを作って販売している。(詳しくはこちら"秋の味覚 フェーダーバイザー 2016"。)


4.1月上旬 Eisweinlese;アイスワインの収穫
アイスワインとは、甘いワインで主に食前酒として飲まれるもの。ドイツ語ではBeerenausleseとも言われる。貴腐ワインもこれに近いもの。
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氷点下15℃まで下がった1月の上旬、朝真っ暗の中をワイナリーへ向かう。ぶどう畑から眺める星空もまた格別である。そして、朝焼けのころにはほぼ作業は終わっている。

と言うのも、アイスワインはぶどうの甘みが最大限のポイント。長期間ブドウの樹で熟れさせて水分を蒸発させて、さらに凍った粒を圧搾することで、濃厚なブドウ果汁だけを取り出すことが可能。つまり、圧搾までの間、粒が完全に凍っていないといけないため、その目安が氷点下10度とのことである。
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凍った房はとても軽くて、なんだか別のモノを収穫しているような気分にもなる。一部カビがあるものもあるが、これが貴腐菌と言われる、高貴な菌であり、これが甘みを促進させるんだとか。詳しくはwikiへ。
収穫まで長期間ブドウ畑に放置されるために自然の影響が非常に大きく、収穫作業も特殊、取り出される果汁も非常に少ないなどなど、とても手間のかかるのがアイスワイン。そのためハーフボトル(375ml)で100€前後、ワイナリーによっては数百€となってしまう。(上のwikiにもあるが、ドイツの有名なワイナリー "Schloss Johanissberg"の貴腐ワインは750mlで600€ナリ。。)そんな手間のかかったアイスワインの風味は格別で、甘みの中に色々な味が凝縮されていて実に高貴な味となる。

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ちなみに、今回収穫したアイスワイン用の果汁は甘さレベルが驚異の212 Oechsle(エクスレ)。エクスレと言うのは甘みの単位で、アイスワイン(Beerenauslese)の基準が110以上、貴腐ワイン(Trockenbeerenauslese)の基準が150以上であることを考えると、今回の収穫品は貴腐菌の効果がとてもうまく表れている当たり年となったわけである。

この甘みももちろん天候に大きく影響されるので、こういった結果を見ていると自然と共に生きているブドウ農家にさらに魅力を感じざるを得なかった。


他にも小さな作業はいくつも体験させてもらったが、少しだけワイン農家を感じることのできたこれらの体験は本当に素晴らしいもので、自分の夢への意識をより高めてくれたのは言うまでもない。
2018年の秋にはまた収穫について、さらにはワインになるまでを書いていこうと思う。